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zoom RSS 八大山人と張大千     王俊宇瀟

<<   作成日時 : 2015/07/03 11:04   >>

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 中国の画家は、それぞれ得意の分野がある。山水画家は殆ど山水しか描かず、花鳥画家は花鳥画に専念する、人物画家も動物画家もそうであるように、基本的にそれぞれ得意な分野の中で活動する。この現象は昔も今も、殆ど変わらない。

 無論、洋画も日本画の世界も、画家の得意不得意が有り、それぞれ得意な分野で活躍する事は当たり前であろうが、しかし、例えば鄭板橋が終始竹と蘭という極めて単一なモチーフに拘るような事例、或は邊寿民が花鳥の中でも主に雁を描き続けるような事例は、やはり中国画壇でしか見られない現象ではないかと思う。
 この現象が生まれた背景には、中国水墨画が必要以上に筆遣いを強調する事が原因ではないかと考えられる。山水画と花鳥画の技法、特にその筆遣いは、全くの別物であり、その事は水墨画を携わっている人間なら簡単に理解出来る。又、題材分野の独占傾向だけではなく、同じ分野の中でも、それぞれの画家は殆ど限られた筆法しか使わない事が判る。例えば山水に於いては、董源は披麻皴、郭煕は巻雲駿、倪瓚は折帯皴、王蒙は解索皴(牛毛皴)などなど、、、。
 
 要するに、中国水墨画は、分野の違いは技法(筆法)の違いを意味する。
 画家それぞれ得意の分野が有ると言うより、画家がそれぞれの分野に合致する得意な技(筆法)が有ると言う方が正しいかもしれない。画家の得意技という見方で考えれば、一人の画家の最も得意な技が限られている事も決して不思議ではない、だからこそ、画家達は自分が得意な筆法を用いて得意な分野の作品しか描かない。失礼な言い方をすれば、画家は特定な筆法で特定な分野の作品しか描けない、と言うことになるではないかと思う。


 しかし、稀に複数分野の作品を描く画家がいる。例えば清初期の八大山人である、或は近代の張大千先生である。

 張大千先生の場合、山水花鳥に止まらず、人物や動物までモチーフを拡げている。しかも、花鳥では写意と工筆の両方で色々な花や鳥を描く、山水でも古今多様なの筆法を自由自在に操る上、溌墨という伝説な技法を甦らせ、更に溌彩まで発展させた功績は、張大千先生の美術史での地位を不動なものにした。
 張大千先生は様々な技法を駆使して山水花鳥或は人物動物各分野で素晴らしい作品を残した、流石に500年に一人と言われる程優れた才能の持ち主である。

 一方の八大山人は、花鳥画が彼の代表的なモチーフであり乍ら、山水画も突拍子もない面白い。八大山人は花鳥画が得意と同時に、かなり数の山水画も描き残している、そのうちの一部は他に類を見ないほど最高な山水画傑作と称賛を送りたい。
 しかし、八大山人の作品を見ると、その筆遣いは花鳥も山水もさほど変わらず、先述したような分野の違いによる筆法の違いは殆ど見られない。つまり八大山人はほぼ同じ筆遣いで花鳥も山水も描いてしまい、絵画題材による筆遣いの境界線を打破してしまったと言える。


 同じく多様なモチーフを水墨画作品にした八大山人と張大千先生、筆遣いという狭い視角から比較すると、両者は全く違うタイプだと判る。
 
 張大千先生はその才能ぶりを思う存分発揮し、様々な技法を思うがままに駆使して作品を創り、更に溌墨溌彩という新しい技法までを確立させた。あくまでもモチーフに適合する筆遣いを拘るりながら、一人の画家として珍しい程多種多様な作品を網羅した。

 一方、八大山人は熟練した巧みな筆遣いに執着する姿勢が一切見られず、ほぼ同様な筆遣いで花鳥も山水も創作するという前代未聞の大胆な試みは、モチーフの違いによる筆遣いの違いの垣根を突破し、モチーフによる筆遣いが異なるという既存習慣も否定した。かといって、八大山人は決して筆遣いを疎かにした訳ではない、彼の筆遣いは普通の人が真似出来ない素直さと重厚感で独特な精神性や趣が溢れている。しかし、彼の作品には、所謂皴法など誰もが知っている様な筆遣いと無縁である。孤高な性格と並ならぬ奇才の彼にとっては、小細工な技法は到底作品の要に成る筈もない、筆遣いの蘊蓄は彼にとってはどうでも良いものである。彼は画面の構成やリスム、そして感情と精神など色々な側面を総合して水墨画の本質へ迫り、前人未到な境地を切り開いた。美術史の観点から見ると、八大山人は自らの作品を以て筆遣いに対する異議を唱える反骨精神を満ちた画家で有り、そして水墨画の本質と意義に対して新たな問題提起をした偉大な藝術家として美術史にその名が刻まれた。

 *下に掲載したのは八大山人の花鳥と山水です。
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