水墨画のご縁__華山で出会った張大千先生の題字  王俊宇瀟

 中国には“五岳”と云われる五つの名山が有り、それらは:東岳泰山、北岳恒山、中岳嵩山、南岳衡山、そして西岳は“華山”である。今月初め頃、その華山を登って来た。

 西安から東約120キロ辺りに位置する華山は、五岳の中では最も奇抜且つ険しい事で有名である。石段の傾斜は時に90度近くあり、崖壁に設置されている鎖を掴まえながら,足を滑らぬ様注意深く徐々に登って行かなければならない。今は北峰と西峰までにロープウェイも出来ているが、華山の特徴である“険しさ”を実感する意味では、自らの足で登って行く事こそが意義ありと考え、何年も前から華山登頂を目標としていた。
 そもそも、小心者の私は、華山がただ険しいから行きたかったのではなく、その野性的で力強い風格に引かれ、特に、華山は一個の巨大な花崗岩によって出来たと言われる様に、大きな岩の塊が至る所に見られ、その巨大な岩が水墨山水を構成する際、デザイン的で現代的な構図と気迫ある表情豊かな画面作りにもっとも適すると考える事は華山に憬れる最大の理由である。

 ところで、千年近く前から出来た唯一と言われる昔ながらの登山道を登って行くと、北峰辺り擦耳崖の手前に、偶然にも岩に彫られた張大千先生の題字に出会い、なぜか嬉しくなり、登山の疲れも一気に何処かへ消えた。
 『張善子大千兄弟来遊』と彫られた内容を観ると、1934年9月~10月に、大千先生が二番目の兄で虎を描く名人である善子先生と共に初めて華山に訪ねられた際の書跡だと考えられる、文字の書風から判断すると、弟である大千が書かれた事も判る。また、余談ですが、1935年大千先生が楊宛君女史と共に再度華山登頂した際,西安で楊虎城、張学良両将軍にそれぞれ招待され、そして張学良のため『華山山水図』を制作したという逸話が伝われている。
 善子大千両先生は私の師匠の顧翼先生の師匠であり、つまり私は両先生の孫弟子にあたる。両先生が共に足が踏んだ地に私も偶然に居た事は、何となく不思議なご縁を感じ、華山に一層の親近感を湧いて止まない。
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