『中国山水画の20世紀』展について  王俊宇瀟

 先日、東京国立博物館で開かれている『中国山水画の20世紀』展を拝見して来た、錚々たる巨匠ばかりの作品は、流石に見応えたっぷりだった。

 画家が社会の一員として生きる以上、当然世の中の変動や思潮に影響され、或は自らの作品を以て世間の審美習慣を変えようともする。特に社会状況が激動の時代には画家達も刺激されやすく、時の流行りに流され、我を失う事も有りうる。ことに中国共産党は藝術創造活動が政治思想の指導の基で行わなければ行けないと主張するため、共和国建国後の作品はその影響からも逃れない、文化大革命時代『破四旧』のスローガンの基で行われた伝統文化に対する破壊行為が、画家達には衝撃的だったに違いがない、あの間で多くの文化人が無くなれた。生き延びた画家達の作品を見ていると、やはり、あの時代の特徴がシッカリ出ている作品も目にする。画家は、時代に合わせようと、必死で自分と戦いながら未知の芸術に挑んだであろう。しかし、近年になって自分の作品を否定する(自作だと認めない)事例まで起きたことを考えると、あの時代にあの絵を描いたのは本心ではない、少なくとも、今から見ればあの絵を描いた自分は本来の自分ではないと目覚め、改めて自我を確認したのではなかろう。いずれにしても、一点の作品は、画家経歴の一ページであり、揺るげない歴史であると同時に、藝術家としてこの世に生きていた証でもある。

 ところで、今回の展覧会に合わせて図録が東京国立博物館で販売されていた、個人的にもっとも関心が有った第一章の作品を眺めていると、文字注釈の間違いが散見され、特に張大千先生の作品に関しては、驚く程の誤りが有り呆れ果てた。先日一緒に展覧会を鑑賞した方と同図録を購入された方のため、第一章の注釈誤りを下に書き留めておく:
1、P58/書山易酒~画山易酒(「書」は「画」の誤り)。
2、P58/己巳年石坡仁兄~己巳為石坡仁兄(「年」は「為」の誤り。
3、P70/援龍松~擾龍松(「援」は「擾」の誤り。始信峰には「擾龍松」は有るが「援龍松」は無い)。
4、P88/於山石間時有金光~於山石間時射金光(「有」は「射」の誤り)。
5、P98/五十五年盛夏壽拜記~五十五年盛夏壽並記(「拜」は「並」の誤り、自分の作品に落款するのに、なんで「拜」?)。
6、P100/六一季秋壽拜記~六一季秋壽並記(「拜」は「並」の誤り、同上)。
7、P102/柳湖有路~泖湖有路(「柳」は「泖」の誤り、泖:静かな小さな湖)。
8、P102/辛巳秋尽写~辛巳秋孟写(「尽」は「孟」の誤り、秋孟:秋の初めの月)。
9、P104/十五年前与先仲同游~十五年前与先仲兄同游(「仲」の次に「兄」を漏れ。先仲兄:亡きなった二番目の兄、つまり張善孖先生のこと)。
10、p104/且護之以関矣~且護之以闌矣(「関」は「闌」の誤り、闌:同欄)。
11、P116/晩上金碧~晩山金碧(「上」は「山」の誤り)。
12、P116/慈光高為山中~慈光寺為山中(「高」は「寺」の誤り)。
13、P120/何用風牽上瀬船~何用風牽上瀬路(「船」は「路」の誤り)。
14、P102、P108、P112、P114、P122、P124/張大千(白文)~張季(白文)。(「大千」は「季」の誤り。この鈐印の間違いは最も理解に苦しむ一つである、どう見ても、「張季」は「張大千」に見えないし、しかも、下の朱文印は「大千居士」だから、同じ画面に二つの「大千」が現れることはあり得ないはずである。何を考えて註釈を書いたのか?さっぱり??)

 ともあれ、第一章をぱらぱらと見ただけで散見された誤りを上記の様に指摘させて頂きましたが、私は、別に人の間違いを発見することで自慢や快感だとも思う人間ではない、こんなことで自慢してどうするんだ?!しかし、これだけ単純ミスが沢山出たことは、編集の方が仕事に対する姿勢に疑問を抱かないを得ない。
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この記事へのコメント

ふたば
2012年08月31日 08:19
先生の所感を読ませていただき、それでは、観に行こう!と、思ったら既に会期終了していました( ;´Д`)
図録の誤り、こんなにあるのですか!
王俊宇瀟
2012年08月31日 11:40
MKさん、いつも読んで下さり、有り難うございます。
一度HPの問い合わせにメールを入れて頂ければ、お薦めの展覧会情報などがある時にメールでお知らせします。
今回の図録は、中国で制作しただそうです、、、なら、納得!
念のため、HP:http://www.art-sumie.com/
問い合わせ:info@art-sumie.com
『キラリ館』
2012年11月12日 18:28
『キラリ館』サイトランキングと申します。
ご訪問いただければ幸いです。
※重複の際はご容赦下さい。
http://pet-kirari.com/ibr/

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