花見と水墨画__枝先と根幹を考える      王俊宇瀟

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 いよいよ、花見シーズン、大木の下で大勢が集まり爛漫に咲き乱れる桜の花に囲まれ楽しく飲むのは、この時期に日本ならではの風物詩であろう。

 「桜」と一事を言っても、沢山の種類がある。又、種類は同じでも幹や枝振りの姿や花の咲き具合などが様々で実に千変万化である。そして幹や枝振りの風格と花の形や色など全て素晴らしいものは名木と言われます。

 何でも「水墨画」と結びつけたくなる私は、水墨画を一本の桜の名木に例えてみる。

 水墨画という大木は千年以上の年月を経て、様々な養分を吸収しながら他に類を見ない独特の花を咲かせている。そしてこの大木は、芸術様式が多彩多様な現代に於いて、昔程の元気が見えないものの、未だに健在と言える。

 ところで、水墨画を桜の名木と例える場合、其の幹が伝統であり栄養の源だと考え、そして枝振りは多岐に渉る諸流派や技法種類或は制作集団で有り、咲き乱れる個々の花は画家であるだと想定する。つまり、幹が有るコソ流派も個々の画家も独自の色気や姿を世に見せる事が出来た訳である。いうまでもないであろうが、幹の役割は如何に決定的で不可欠のは明白である。にも拘らず、花見する場合、どうしても幹よりも花の方に目を奪われる傾向がある、マ~、花見なら良いでしょうが、水墨画となると、個別の作家や流派を見るだけでは真の水墨画を極める事は無理がある。

 歴史上に名を残す画家達は皆源から十分な栄養を吸収しながら、それぞれ独自の花咲かせていた、そして、水墨画の世界でも、個性的な作品ほど注目される。成熟した絵描きとしては、自分だけの独自なカラーがなければ其の名を美術史に残る事は不可能であろう、そういう意味で、画家の立場からいえば、作品の個性が強ければ強いほど良いと言える、つまり、幹からの栄養を十分に取りながらも、如何に幹との距離を保つ事は個性を維持する事の要だと思う。しかし、水墨画を習う初心者の場合、余り個性的過ぎる作品に目を奪われ其れを真似すると、一見して手っ取り早く個性的な作品を創りやすい錯覚に陥りやすく、屡々栄養不良な状態に落ち、ヘタすると邪道に迷い込み本物の良さを理解できなくなる最悪の結末になる。つまり、成功した個性の強い作品は、十分な古典や技法を身につけた画家が自分の心境環境に合う様に工夫した結果によって成立した訳で有り、また個性が強いほど、つまり独自性が鮮明なほど、源との距離が離れていると理解しておかなければならない。言い換えれば、伝統を基としながらも伝統から距離を置くほど独自色の強い作品が生まれる。しかし、個性的な作品は独自性が強い一方、普遍的とは言えない部分も沢山含まれている事を忘れては行けない。普遍的ではないものを当たり前と感違えて習うと当然良い結果を得られない。
 一般的で言うと、画家が独自性を求め、自分なりの道を進むうち、どうしても極端になりがちである、ある意味で言えば極端になればなるほどほど個性が強い事は間違いないだろうが、極端なものを学び更に極端んになろうと行動すると、先が益々狭くなる事は容易に想像できる。逆に、源に近いほど栄養がたっぷりで、そこから出発して成功を納めた先賢が居ることは、我々も同じ道を辿れば自分なりの新しい道を見つかる可能性は十分にあると私は考える。余り抽象的な話しでは解りづらいので、例えば今人気抜群の呉昌碩や斎白石の場合、老缶白石は鄭板橋など揚州八怪に影響を受けた事は事実だし、そして板橋など八怪の前には八大山人が居る、八大の前には徐渭が居る、、、といった流れの中、青藤は素晴らしい作品を残してくれたものの、名作の多くは個性が強過ぎて決して一般的と言えない事柄になる、この点は、彼の人生や感情や性格とも合致すると思う。文長の影響を受けてい乍らも大写意花鳥を更に成熟させ極致まで其の芸術性を高めたのは八大山人だと私は認める、そして八大の後塵を拜する板橋や老缶白石諸賢は皆美術史に残る巨匠ではあるが、八大山人には到底及ばないと個人的に思う。この様に、花鳥大写意の流れの中で、やはり八大山人の作品は完成度の高い源として十分な栄養を供給できると言えよう、事実上、鄭板橋も呉昌碩も斎白石もそれぞれ個性的な作品を創り出し皆大家になれたわけだから、、、

 話が余り長くなり書く方も読む方も疲れて来る、そんな訳で中途半端だが総括してみる。
 水墨画家としては、作品の個性を全面的に打ち出す事は伝統と距離を置く事である、と同時に、長い糸で伝統と繋がっていなければただ無知な自己満足と言えず、伝統との繋がりがない作品は根のない源を失った花の様に、生命力に欠け大輪の花を咲かせられない上長持ちも出来ないであろう。
 
 では、水墨画の源は何かというと、それは、伝統的な様々な技法や知識、そして自然に対する東方ならではの独特な感性と認知、それと芸術に対する見識と経験などなど、多岐に渉る要素の総体的なものであり、それらが水墨画という大木の幹を成し、此の幹の基で名作の花が咲き、今までも、これからも、佳い作品が咲き続けると信じる。
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