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zoom RSS 宋元時代が水墨画の最高峰と言われる理由を考える   王俊宇瀟

<<   作成日時 : 2014/11/17 23:12   >>

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 『宋画全集』と『元画全集』の刊行に続き、これから明清と唐以前の中国絵画も一堂に集められ、最新の技術を駆使して高品質な全集が刊行されると聞き、誠に有意義な仕事と賞賛を送りたい。『宋画』だけでも邦貨にして百三十万以上もする(豪華版は二百万超)高価なシロモノであるため、個人的には中々手が出ないが、何処かの図書館でも観れればと、想像するだけでも嬉しくなる、、、

 そして、改めて、宋元の絵画を考えてみたくなる。

 宋元絵画は、中国絵画史の最高峰であることはほぼ共通の認識になっている。しかし、いままでは、ただ皆がそう言っているからそうであろうと受け身になっているだけで、何故宋元が最高峰なのかは、あまり深く考える事がなかった。

 “作品が最高だから、最高峰なんだ!”というのも当たり前の話しで、誠にその通りである。
 美術史を巡れば、五代から宋元に至る時期に大家が輩出した上、数々の名作が生まれた事実は宋元水墨画の隆盛を物語っている。(唐以前は壁画以外に保存されている作品が少ない現状も忘れては行けない)。山水の領域で言えば、五代の董源と巨然や荊浩、関同から宋の李成、范寛、郭煕,馬遠、夏珪そして元末四大家(黄公望、倪瓚、呉鎮、王蒙)に至り、、、皆優れた最高傑作を残してくれたおかげで中国美術史の黄金期を築く事が出来たと言えよう。

 しかし、宋元絵画全体を観察すると、個々の作品の素晴らしさに感銘を受けると同時に、水墨画の基本的なスタイルが、あの時代で既に完成されていた史実が重要な意味を持つことに気づく。
 
 特に山水画の場合、根幹的な技法と言われる“皴法”が、元時代まで殆ど完成されていた事に注目すべきであろう。例えば、最も重要な皴法の一つ“斧劈皴”は唐時代の李思訓の小斧劈皴をはじめ、南宋の馬遠、夏珪らが大斧劈皴に発展させていた。もう一つ基本皴法の“披麻皴”は、五代の董源で始まり、元末の黄公望で集大成を迎えた。他の皴法をみると、“雨天皴”は范寛が良く用いた技法で、“巻雲皴”は郭煕の得意技、“折帯皴”は倪瓚のお家芸、“解索皴(牛毛皴)”は王蒙がよく用いた技法であり、また、“米点”は北宋の米芾,米友仁親子が確立させたことは言うまでもない、、、つまり、山水画の要とも言える皴法は、その殆どが宋元時代で既に確立され完成されていた事が明白である。

 花鳥画の分野に於いても同じ事情が言える。華麗繊細な双鉤填彩法つまり“工筆画”は、五代の黄筌親子から宋の徽宗帝で最高峰に到達していた。線描を用いず側筆の面で花や葉を表現する“没骨法”に関しても、やはり五代の徐煕から宋の趙昌で次第に創出されたと言われている。
 
 このように、山水画の殆どの皴法と花鳥画の二大分野、つまり工筆と没骨(写意)、これら中国水墨画を代表する様式は、宋元時代ですでに確立された事がこの時期の水墨画の豊かで旺盛な創造力と高い完成度の象徴で有り、宋元絵画が最も高く評価される理由でもあると考える。

 以前もお話をしたように、藝術は“創造”がなければならない、そてし藝術の“創造”は、結果的に“様式の創造”につきると今でも信じている。この思いは個々の作品に対する判断のみならず、美術史の視点からも同じ事が言えると思う。


 “様式創造”の有りかという思考方法のもとで水墨画の歴史を考察すると、明清以降の絵画は宋元で確立した優れた様式の伝承が自らの使命とし、基本的に宋元様式の範疇の中で葛藤していることが見て取れる。悪く言えば宋元様式を踏襲する事だけで精一杯になり、当然宋元様式から脱する事もなければ宋元を超える事も有り得ない、そもそも宋元を超えようという発想すら殆ど持たなかったのではないかと、明清の画論を見ても大凡な判別はつくであろう。

 無論、長い明清時代に於いても徐渭や八大山人、龔賢、揚州八怪といった突拍子もない奇才達が独自なスタイルを築き上げ、異彩をを放つ場面も有ったが、総体的に、明清以降の中国絵画は宋元様式を継承する事が主流になり、“様式の創造”と言う見地から見ると、新しい様式を創り出すにはやや力不足を感じさせた事がこの時期水墨画の最大な弱点ではないかと言わざるを得ないと思う。と同時に、宋元絵画の素晴らしさと旺盛な創造力を再認識させられることになり、結果的に、宋元絵画は未だに中国絵画史の最高峰を君臨し続ける最大な理由ではないかと考える。


 我々水墨画作品を創る人間が美術史を考察する目的は、単なる過去の回顧と遺産の吸収だけではなく、歴史の流れを見極めその教訓を得、その流れの中に自分自身を置くことで如何に水墨画の将来と画家自身の目標を見出す事こそが最大な課題ではないかと思う次第である。

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